
私たちは、日々の雑多な作業に意識を裂き、時間を奪われ、日常を過ごしています。 すべきことが次から次へと沸き起こり、心配ごとがなくなる時がありません。 私たちが日常を過ごす上で頼りにしている過去の記憶は、いつの間にか過去の失敗や反省 すべき出来事をよみがえらせ、悔しさや悲しみ、怒りなどの感情をもたらしてきます。 自分自身の将来への不安は堂々巡りを繰り返し、私たちの中に悶々とした感情を滞らせます。 そのような思いが幾重にも重なり、私たちはふとこんなことを思うのです。 なぜ私はこんなにも恵まれていないのか、と。 |
このような思いにとらわれた時、大切なのは「今」に生きることです。 今に生きる。 一見あたり前のことですが、私たちが過ごす多くの時間、意識は「今」とは異なる時を 彷徨っています。 あなたが、過去に経験した苦しい記憶や感情に呑まれるのは、その苦しさを経験した「過去」に 生きているからです。 また、まだ起こってもいない出来事を想像し不安や恐怖にとらわれてしまうのは、苦しい状況に おかれた「未来」に生きているからです。 あなたの意識は、過去や未来をまるで放浪者のようにうつろっています。 そして本来あるべき「今」にはなかなか戻ろうとはしない。 「今」に生きてください。 尖った針の先端のような「今」という一瞬に、意識を戻してみてください。 「今」は決して苦しみを生み出さないことが分かるでしょう。 そして自分がいかに素晴らしい環境の中に身をおいているかに気づくことでしょう。 |
「今」へと至る入り口は、様々なものの中に隠されています。 その1つが呼吸です。 呼吸に意識を向けてみましょう。 ・まず口から大きく息を吐き出してみましょう。 ・吐き出したら、今度はゆっくり鼻から大きく息を吸い込んでみましょう。 ・ゆっくりとゆっくりと、口から吐いて、鼻から吸います。 ・今度は息を吐きながら、息を吐き出している自分に意識の焦点をあててみます。 ・吸うときも同じです。息を吸いながら、息を吸い込んでいる自分自身に意識をあわせます。 ・私は今、息を吐いている、私は今、息を吸っている。 そんなことをイメージしながら、ゆっくりと呼吸を繰り返してみてください。 ・吐くときは、肺から喉、そして口の先からゆっくりと空気が送り出されるのが分かります。 ・吸うときは、鼻から喉、そして肺へと、空気が糸を引くように流れ込み、肺が広がっていくのが 分かります。 ・ゆっくりと吐き、ゆっくりと吸う。 ・肺がしぼみ、そして広がっていく感覚が分かります。 ・ゆっくりと吐き、ゆっくりと吸う。 ・空気が体の外に流れだし、そして流れ込む感覚をとてもクリアに感じ取ることができます。 ・ゆっくりと吐き、ゆっくりと吸う。 ・呼吸をしている自分を感じます。 ・ゆっくりと吐き、ゆっくりと吸う。 ・呼吸に集中すればするほど、思考がやんでいくのが分かります。 ・呼吸している自分だけがある。 ・そしてゆったりとした安らぎがある。 ・あたたかなものに包まれているような、優しいものに撫でられているような、そんな感覚が あるかも知れません。 ・これが「今とともにある」という感覚です。 |
次に意識を呼吸から耳に向けてみましょう。 耳を澄ませてください。 聞こえるものに意識を向けてみてください。 何が聞こえますか? 何か1つだけでいい。その音をとらえ、意識を向けてみてください。 どこから聞こえるでしょう。どんな音がするでしょう。それはどんなリズムで音を奏でているでしょう。 その音に意識をつなげるという感覚を試してみてください。 音と心が同調する感覚です。 心の深い部分が、音のリズムに同調し、溶けて広がっていく感覚です。 さて、次に意識を違う音に向けてください。 さっきの音とは違う音が、どこからか聞こえているはずです。 意識のチャンネルをそちらに合わせ、その音を感じてください。 何が聞こえますか。どこから聞こえますか。 もし音との同調ができたなら、さっき何か感じ方が異なるか、確認してみてください。 音は様々な波長、リズム、大きさがあります。 心の奥で、それらの違いを感じ取ってみてください。 慣れてきたら、ほかの音にも意識を向けてみましょう。 音に意識を向ければ向けるほど、その数は無限に増えていくように思えます。 そして実際に、あなたの周りには様々な音があなたにバイブレーションを送っているのです。 |
音の次は体に意識を向けてみましょう。 今あなたは何に触れていますか? あなたの肌に触れているものを意識してみます。 もし良くわからなければ、少し動いてみましょう。手のひらで何かを触ってみてもかまいません。 それはどんな感触をもっていますか? 温かいですか?冷たいですか? ザラザラしていますか?すべすべしていますか? その感触に意識をつなげてみてください。 そしていくつか異なるものに触れ、それぞれの感触を確かめ、意識をつなげてみてください。 それらの感触の違いを確かめてください。 |
次に意識の焦点をあわせるものは、目です。 何か1つのものに視点をあわせてみてください。 何が見えますか? それは何色をしていますか? そのものが持っている色は、きっと1つではありません。 その様々な色を見出してあげてください。 物が持つ色や形には特有のパターンがあり、まったく同じものは2つとして存在していません。 それは世界でたった1つだけ存在する、とても貴重なものなのです。 視点をほかに移してみてください。 そこに存在する形と色とを感じてみてください。 その物がもつ固有の存在感のようなものを感じることができるでしょうか? 次は光を感じてみます。 あなたに物が見えるということは、必ず光が存在しているということです。 光源はどこでしょうか? 光は何に反射しているでしょうか? あなたの体をみてください。 光はあなた全体に降り注ぎ、包み込んでいます。 その光に何かを感じますか? 意識を光につなげ、溶かしてみてください。広げてみてください。 |
あなたは「今にある」という感覚を取り戻しています。 とても安らかでおだやかで、心地よい感覚があなたを包んでいるのではないかと思います。 あなたの意識は「今」にあり、そしてまるで波紋のように周囲へと広がっています。 そしてあなたの意識は、あなたが触れたものたちとつながっています。 あなたの息や体、聞こえる音、触れた肌ざわり、目に触れたもの、そのすべてにあなたの 意識がつながっています。 そしてそれらは皆、あなたと同じ「今にあるものたち」です。 あなたと同じ「今」という瞬間を共有している、かけがえのないものたちです。 あなたは「今」を生きています。 あなたは「今」を感じることができます。 「今」という瞬間は、あなたに安らさとおだやかさをもたらします。 「今」にあるあなたは、とても自由です。 そして自らの意思で、あなたの周りに存在する様々な物たちに心を通わすことができます。 それらは、あなたとともに「今」にあるものたちです。 それらはあなたの存在を受け容れ、あなたを見守っているものたちです。 感じてください。「今」を。 そして生きてください。常にあり続ける「今」という瞬間を。 |